1ヶ月ほど前、息子のトラちゃんが「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(ADHD)」と診断されました。脳の特性による、いわゆる発達障害です。生きづらさを感じ、うつ症状などの二次障害が生じてしまう子もいるそうです。「周りの子と何かちがう」「育てにくい」と感じている保護者のなかには、心療内科での診察を検討する人も少なくないですよね。発達障害の診断は、二次障害を防ぐことにつながるそうです。ここでは、わたしがトラちゃんと一緒に心療内科に通うなかで感じたことをお伝えします。
発達障害とは?誤解されやすい特性を持つ
いつも怒られるんだよな〜。
発達障害とは、「自閉症スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(ADHD)」「学習障害(LD)」と大きく3つに分類されるようです。これらを併発することも多く、それによって「困りごと」が複雑になることもあります。生まれつき脳機能に特性がありますが、それを理解されない環境だと「わがまま」「自分勝手」などと誤解されることも…。特性ゆえの困難さは、特性に合わせた学びの機会や、環境の整備によって軽減されると言われています。
発達障害はどこで診断されるの?
トラちゃんが通っているのは街のメンタルクリニックです。小児の発達障害の診療に長く携わってきた先生が診てくださっています。このように、発達障害の診断は、児童精神科・小児神経科・小児心療内科などで受けられます。一部の小児科でも検査できるようですね。これらの病院は、からだに現れる病気や状態とは違い、こころの病気や状態を診てくれるところ。最近は、精神科のなかに「発達障害外来」という専門の部門をもつ病院もあるようです。
トラちゃん7歳。初めてのクリニックへ
トラちゃんがクリニックに通い始めたのは7歳。同じような特性を持つ子と比べると、ちょっと遅めかもしれません。4歳半から市の療育に通い、いつかは発達障害の検査を受けようと思っていましたが、コロナ禍だったのと、「心療内科はとても混んでいて、初診までにおよそ半年くらいかかる」という話にビビっていたのが大きな理由です。しかも、昼間は仕事があるので保育園の送迎だけでも手一杯。「今できることはやっている」という気持ちもあったと思います。
その後、いろいろあって小学1年の3学期から放課後等デイサービスに通うようになり、通所に必要な「受給者証」を更新する必要が出てきたのが、心療内科に通い始めたきっかけでした。放課後等デイサービスの利用には、療育手帳や障害者手帳、医師による診断書などが必要なのです。
放課後等デイサービスとは、発達に課題を抱える子たちが療育を受けられる学童のようなもの。トラちゃんの場合、5歳のときに市の療育でWISC(ウィスク/子どもの知能を測定するための検査)を受けており、その結果によって発達の凸凹が発覚したことから、放課後等デイサービスに通うことを許可されていました。ところが、受給者証の効力は2年。それが切れる時期が、約8ヶ月後に迫っていました。
結局、トラちゃんが初めてメンタルクリニックを訪れたのは、小学2年生になったばかりの春。7歳の頃です。3回目の診察で「ASD/ADHD」と診断され、4回目の診察で診断書を受け取りました。
クリニックのメリットは「親子の心のケア」が大きかった
今は一ヶ月から一ヶ月半に一度、クリニックに通っています。継続的な漢方薬の処方も通院目的のひとつですが、やはり大きいのは親子の心のケアでしょうか。診察時間は、診断を受けるまでは1回30分と長めでしたが、その後は15分ずつ。短いと思うかもしれませんが、トラちゃんが通うクリニックでは、診察の前日までに専用アプリから「トラちゃんの現在の様子」や「困っていること」などを伝えるシステムなので、診察時間内で、今の困りごとについて話し、その先の計画を立てるところまでできています。トラちゃんは診察のみなので、15分間でも十分だと感じています。(カウンセリングは別枠・別料金であることが多いです)
先生はご自分からバーッと話すことはなく、まずはこちらの話を丁寧に聞いてくれる方。威圧感がまったくなく、受け入れ体制でいてくださるのがよくわかり、私はとても話しやすいです。その時々の悩みを持ちかけると、「それはASDにこんな特徴があるからです」「ADHDの傾向はこんな感じで…」と、悩みに対する答えをくださり、その上で改善・解決の糸口を教えてくださるので、かなり心がすっきりします。本人はもちろんのこと、親もわからないことだらけなので…。具体的にどんなアドバイスがあったのかは、他の記事でもくわしく紹介していくつもりです。
心療内科(精神科)に通い続ける意味とは
正直にいうと、診断書を受け取るという目的を果たした後、そのままクリニックに通い続けるかどうか迷っていました。仕事をしながら1ヶ月に1度通うのは大変だし、多少なりともお金がかかります。(予約料2200円+交通費)
あるとき、以前からお世話になっていた市の役員さんに「心療内科に通い続ける理由」について聞いてみると、こんなアドバイスをいただきました。
「その子の成長を、親だけでは先生も一緒に追っていけるメリットがある。今はまだかわいい年齢でも、思春期になると情緒の育ちによって部活や言葉遣い、お金の使い方などの悩みが出てくるかもしれない。そういうときに、過去の困りごとなどを照らし合わせながら『あの時はこうだったから、今回はこうしよう』という助言や指導があるのではないか」
また、もし支援の必要がなくなれば「診察を半期に一度に減らす」などの提案もあるのではないか、と話してくれました。
年齢が上がるにつれて課題がどんどん変わるなか、つかず離れずの絶妙な距離感で、長い目で見守ってくれる存在がいるのはありがたいもの。発達障害などの課題を抱えていなくてもカウンセルを定期的に受けるような習慣がアメリカなどにはあると聞きますが、日本ではあまり一般的ではありません。そんななかでも、「カウンセラーの先生がメンターになった」「先生に出会ってから人生が変わった」といった声を聞くことがあります。クリニックの先生には、トラちゃんを見守ってくれる大切な第三者になってもらえたら、と感じています。
7歳の診断で後悔していること
7歳(小学2年生の4月)からクリニックに通い始めたトラちゃん。これが早かったのか、遅かったのかはわかりません。ただ、未就学児の頃から発達障害の疑いはあったので、仕事の都合で心療内科になかなか踏み出せなかったのは、トラちゃんに申し訳なかったと感じています。
トラちゃんの通っていた保育園は、何度訴えても「トラちゃんのことを特別だとは思っていない。周りの子と同じように育てています」と言われ、それは「何があってもトラちゃんはトラちゃんだから」という愛情を伝えていただいたこともありましたが、「怒られることが多いと二次障害(うつ状態など)が起こりやすい」という発達障害の特性を担任の先生方が理解しているとは思えませんでした。実際にトラちゃんは、毎日のように「今日も怒られた」とがっくり肩を落として帰ってきていました。いまだに保育園の話をしたがらないし、「あそこは地獄だった」と話します。
後悔先に立たず、ですが、4歳や5歳の頃から心療内科に通っていれば、そこまで嫌な思いをしなくて済んだかも…と今は思います。クリニックの先生も「二次障害としてのうつ状態になってからだと、一次障害の診断がわかりにくく、適切な支援をするまでに時間がかかる」「早期診断・早期支援が好ましい」と語っていらっしゃいます。もしお子さんの発達の特性が気になる人がいたら、早めに相談するのがおすすめです。「キャンセル待ち」を活用すれば、半年もまたずに受診できるかもしれません。
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